蛭川研究室

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体調が悪いそうですが、なにか病気なのですか?

過眠と倦怠感に悩まされていますが、背後に双極症があるとも診断されています。

過眠症

繰り返しやってくる強い眠気と倦怠感に悩まされています。まず、寝ている状態から起き上がるのが難しくなることがあります。起きるのがしんどくて仕事に行くのが面倒というレベルではなく、重症のときには異様に身体が重く(鉛様麻痺)、立って歩くのもままなりません。こういうときは授業や会議をドタキャンせざるをえなくなり、非常に困っています。

あるいは、起きて普通にしているときに、急に耐えがたい眠気に襲われることも多々あります。自動車の運転などはしないほうがよいと言われています。とくに疲れているときなどに、睡眠と覚醒のサイクルがおかしくなり、入眠時に入眠時幻覚や入眠期の明晰夢を見ることがあります。

このことから、ナルコレプシーという重度の過眠症の可能性があるということで、検査[*1]を受けました。しかし、起きているときに来る眠気が、それほど急激ではないことと、情動脱力発作(カタプレキシー)という、ナルコレプシーに特有の症状がないことから、ナルコレプシーではないとの診断を受けました。

検査の結果、「特発性過眠症」と診断されました。特発性というのは、つまり原因不明ということです。逆に不眠になることもあり、背後になにか別の病気があるものと考えられますが、はっきりしません。

非定型うつ病

身体に力が入らず、動けなくなってしまうのは、うつ病の一種だという可能性もあります。しかし定型的なうつ病では、眠れない、食欲がない、その他、何事にも意欲が湧かない、いっそ死んでしまいたいとさえ考えるようになってしまいますが、私にはそういう症状はありません。また、定型的なうつ病の背後には、だいたい精神的なストレスがあります(心因性)。私の場合は、幸いなことに、そういう、強いストレスもありません。

むしろ過眠や過食をともなう特殊なタイプである「非定型うつ病」と呼ばれる症状のほうが、私には当てはまりそうです。必ずしもストレスとは関係がなく(内因性)、秋になって日が短くなることで起こるうつ病を「季節性うつ病」と呼びます。栄養をたくさんためこんで冬眠に向かう体のはたらきの名残りなのだという説もあります。ただし、私の場合はストレスとも季節も関係なく具合が悪くなります。

双極症

従来「躁うつ病」と呼ばれてきた病気は、その後「気分障害」と名前を変え、さらに、もっぱら精神的なストレスによって起こる(心因性)「[大]うつ病(単極性うつ病)」と、より体質的な(内因性)「双極性障害」とに分けられるようになりました。さらに、「障害」というと一生治らないハンディキャップだというニュアンスがあるので「双極性障害」は「双極症」と呼ばれるようになりつつあります[*2]。単極性のうつ病(大うつ病)に対し、双極症にともなううつ状態は、非定型うつが多いとされています。

双極症は躁状態うつ状態が突発的にあらわれる病気ですが、重度の躁状態があらわれることがある「Ⅰ型双極症」と軽度の躁状態(軽躁状態)があらわれることがある「Ⅱ型双極症」に分けられます。躁状態があらわれなければ、Ⅰ型双極症と、Ⅱ型双極症と、単極型うつ病は、区別できません。

現在の主治医にはⅡ型双極症だと診断されていますが、前の主治医には、双極症などではなく、単純に睡眠障害だと言われていました。そのような食い違いが起こるのは、双極症が、遺伝的な体質を背景とした神経系の病気であるのにもかかわらず、脳の画像や遺伝子や血液検査の数値など、客観的な指標では識別できず、医師の経験的な見立てによって診断するしかないのが現状だからです。

Ⅰ型双極性に伴ってあらわれる重度の躁状態では、身体的に調子が良いだけではなく、急に怒りっぽくなって暴力を振るったり、あるいは、衝動的に会社を辞めて事業を始め、失敗して借金を負うといった行動が起こることもあります。Ⅱ型双極性に伴っておこる軽躁状態という症状は、ふだんより調子のよい心身の状態とは区別するのが困難です。服装が派手になる、買い物をしすぎてしまうということも言われていますが、それも程度の問題です。私も和服を仕立てては街を闊歩していたこともあります。

私も元気なときには、北はヒマラヤ南はアマゾンまで精力的に歩き回ったものでしたが、思い起こせば自分でも信じられないような行動力です。しかし、それが病的な行動なのか、学問的な情熱なのかは、自分にはわかりません。もともとオッチョコチョイな性格で、ついつい調子に乗ってしまうところがありますが、それが病気なのかどうか、生理的な検査にもとづく診断はできません。重度の躁状態はともかく、軽躁状態のばあい、ほんらいの性格と区別するのは容易ではありません。定型的なうつ状態もあらわれませんが、非定型うつ病ということなら、とくに過眠については、当てはまります。元気なときでも、寝なくても頑張れるというわけではないので、これも躁状態の診断には当てはまりません。しかし、けっきょくのところ、私が双極症なのかどうかについては、正確にはわかりません。

お調子者とはいっても、私には怒りや悲しみのような感情の起伏は、あまりないように思います。他人を殴ったり怒鳴ったりしたこともありません。「気分」障害とはいっても、気分や感情の変化は表面的な症状であって、身体に症状があらわれることもあり、その本態は脳内物質のバランスの崩れだと考えられます。双極症は、かつては「精神病」として扱われてきましたが、現在では、神経細胞の内部での情報伝達が不安定になる病気だとされています。

現状

何年も前から繰り返し同じ症状に悩まされているのですが、逆にいえば進行性の、悪化していく病気ではなさそうです。遺伝子の検査、脳波やMRIなどの生理的計測、前頭葉機能などの心理検査を続けていますが、前述のとおり、検査では明確な診断ができないのが現状です。当座、症状に合わせて薬を服用しつつ、なんとか生き延びています。診断が確定するのを待って治療を始めるというわけにもいきませんから、効き目をみながら薬の種類や量を変えています。

付記

神経科学の進歩により、従来「精神病」と呼ばれてきたものは、神経系の病気だということが明らかになってきました。「精神病」などというと、いかにも人格に問題があるというニュアンスがあります。しかし、胃の病気になれば、一時的にムカムカして気分が悪くなることがあるのと同様、脳の病気になれば、一時的にイライラして性格が悪くなることもあります。逆に、とくに神経の病気ではなくても、なんらかの原因で、性格が悪くなることもあります。

また、狂気=天才とみるのも、偏った見方です。狂気が才能を後押しすることはあるかもしれませんが、狂気が才能を生むわけではありません。

あるていどの歳にもなれば、だれしも持病の一つや二つはあるもので、他の内臓の調子が悪いように、脳の調子が悪くなることもあります。胃の調子が悪ければ胃薬を飲めば良いように、脳の調子が悪ければ「脳薬」を飲めばよいだけのことでしょう。

ただし、心因性、つまり、ストレスで胃を痛めてしまった場合には、ストレスを取り除かなければ、薬を飲んだだけでは胃の病気は治りません。それと同様、ストレスで脳の調子を悪くしてしまった場合には、ストレスを取り除かなければ、脳の病気は治らないでしょう。これは、持病とはまた別の問題です。

(ついつい長くなってしまいました。病人が自分の病気について長々と述べても仕方のないことです。詳細な議論は別のページに追い出して、本文はもっと簡素にします。)


(2017-01-31 作成 06-06 更新)

*1:入眠潜時反復検査(MSLT検査)

*2:英語の「bipolar disorder」という診断名の和訳として「双極性障害」が使われてきましたが、他の精神疾患における「disorder」(一時的な変調という意味)が「症」と訳されているのと統一するためもあり、2018年に予定されるICD-11の改定に合わせて「双極症」という訳語が正式に用いられることになります。ただし、これは訳語の問題で、他の日本語の診断名を使うことが禁止されるわけではありません。