精神展開薬と神経伝達物質

インドールアミン系精神展開薬

神経伝達物質であるセロトニン(5-HT)は、インドール核を持つインドールアミンである。

f:id:ininsui:20161105163302p:plainf:id:ininsui:20161105163335p:plain

セロトニンインドールの構造式。精神展開薬(精神展開薬 psychedics )の多くは、インドール核を持ち、セロトニン(5-HT)とよく似た分子構造を持っている。セロトニン受容体(主に5-HT2A)のアゴニストとして作用すると考えられている。(シナプスにおける受容体については「神経伝達物質と向精神薬」を参照のこと。)



いわゆる「神経症圏」の疾患、つまり不安、うつ、強迫などに有効とされるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)と同様、インドール系の精神展開薬は、少量ではSSRIと同様の作用を示すが、ある程度以上では精神展開作用を示す。これは、インドール核を持たないメスカリンなどでも同様である。

f:id:ininsui:20161105163414p:plainf:id:ininsui:20161105163450p:plain

アヤワスカ茶の有効成分、N,N-DMTと、シビレタケの有効成分、プシロシン。(同じくシビレタケの有効成分プシロシビンは4位の「-OH」が「-O-PO4」となる。)その他のインドール系精神展開薬の構造は、DMT-Nexus Wikiに詳しく載っている。

カテコールアミン系精神展開薬

神経伝達物質のもうひとつのグループが、カテコール基を持つカテコールアミン系の伝達物質であり、

f:id:ininsui:20161104153332p:plainf:id:ininsui:20161104153724p:plainf:id:ininsui:20161104153812p:plain

左上から、ドーパミンノルアドレナリン、アドレナリンの順に生合成される。代表的な興奮剤であるメタアンフェタミン

f:id:ininsui:20161104154017p:plain

は、カテコールアミン系の神経伝達物質と構造がよく似ている。一方、ペヨーテやサンペドロに含まれる精神展開薬であるメスカリン

f:id:ininsui:20161104154304p:plain

も、セロトニンよりはカテコールアミンと構造が似ている。このことは、精神展開薬が単純にセロトニン受容体のアゴニストとしてセロトニン系を活性化するだけではなく、もっと複雑な作用機序を持つことを示唆している。

共感薬

広義の精神展開薬ではあるが、共感性を高める物質である「共感薬 enpathogen[*1]」としてよく知られているものに、MDMA (3,4-MethyleneDioxyMethAmphetamine)

f:id:ininsui:20161104154650p:plain

がある。これもカテコールアミンと似た構造を持っている。MDMAは人工合成物質だが、ペヨーテやサンペドロにも似た構造を持つ共感薬が発見されている[*2]。

f:id:ininsui:20161104155103p:plainf:id:ininsui:20161104155235p:plain

f:id:ininsui:20161104161446p:plain

左上から、MDPEA、ロフォフィン lophophine、ロビヴィン lobivine。人工合成物質であるMDMAと似た構造と作用を持つ物質が植物に含まれていることが明らかになりつつあるのは興味深いことである。


(2016-11-04 作成 2017-10-29 更新 蛭川立

*1:empathogenのpathogenは病原菌という意味もあるので、entactogenという用語が使われることもある。またこれらの英語の定訳はないが、ここでは共感薬という和訳を使用する。

*2:Bruhn et al. (2008).