蛭川研究室

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家族図の表記法

男は四角か三角か?

 このブログでは、家族図の中で、おもに文化人類学的な表記法を使っています。自然人類学など、多くの他分野との違いは、文化人類学では男性を△で表すのに対し、他の分野では□で表すことです。女性が○であるのは同じです。他の多くの分野での一般的表記法については、たとえばVINTAGEの「かんたんジェノグラム」の解説ページにリンクを張っておきます。

 性別が不明な場合と、性別が男女以外の場合、遺伝的な親子と社会的な親子の区別、生物学的な性関係と同居関係と、社会学的な婚姻関係の区別、死別した場合と死者と結婚した(冥婚)場合の区別など、表記が難しいものほど、それについて考察する重要性は増すのですが、一般化された有効な表記法は存在しないようです。

「冷戦」で分断された「二つの人類学」

 人の話を聞いては「フィールドノート」に書き留めるという作業をし始めたのは、大学を出てからでした。本や論文を見て自然に真似たのだと思いますが、気づけばいつの間にか文化人類学的表記方法に慣れ親しんでいました。しかし、四月から学生相談の仕事を始めるようになり、他人にも読まれることを意識しながら家族図を書くようになってから、ふと文化人類医学的な表記がマイノリティであることに思い当たりました。記号は記号ですから、正しい記号などがあるわけではないのですが、読むのが誰かは考えなければなりません。

 最後に卒業、というより退学したのは、自然人類学の大学院で、そこでは確かに男性を□とする表記法が使われていました。隣接する文化人類学の分野では男性は△です。意外に齟齬が生じないのは、両分野にあまり交流がないからなのでしょうが、それは望ましいことではありません。これは、なにも人類学や地理学のような特定の分野に限定された問題ではありません。自然科学と人文・社会学という、「二つの文化」の総合ということについては、学際的な学部に籍を置きながら日ごろより考えていることでもありますが、逆にいえば、朝鮮半島や中台両岸のような、特殊にみえる場所が、「冷戦」という普遍的な問題の集積点でもあるように、人類学や地理学(あるいは心理学)という分野にこそ、「人間」という普遍的な問題の、もっとも先鋭的な部分が集積されているのだとも言えましょう。


(2016/2559-07-03 作成 蛭川立