蛭川研究室

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神話・聖典などの古典的文献

 世界各地に口承で伝えられてきた神話や伝説、諸宗教の聖典は、著者が不詳のものが多い。聖者の言行録などは、口伝で伝えられて、後に後継者たちが文字にまとめた場合も多い。そうした文献については、地域別に、このページにまとめている。ここでは、いくつかの翻訳や注釈を紹介するが、内容の信憑性や翻訳の正確さについての議論には立ち入らない。

 このブログ上で引用した文献は、以下に挙げた和訳を参照している。原文を参照した上で、訳を独自に変えた部分もある。なお、蛭川は、古典文献についての専門的な知識を持っていない。古典ギリシア語、ラテン語サンスクリットパーリ語、漢文、日本の古文は、辞書を引きながら、個々の単語を追える程度だが、ヘブライ語アラビア語は全く読めない。

神話・伝説

 世界各地の神話・伝説の網羅的な翻訳には、名著普及会の『世界神話伝説大系』や、ぎょうせいの『世界の民話』がある。両者ともにヨーロッパに偏りがちで、また民族名が明記されていなかったりする神話もあり、不完全である。しかし『世界神話伝説大系』が全世界を42巻で網羅しているという点で、日本語では他に類を見ない資料である。1935年に出版された文語の書影は国立国会図書館デジタルコレクション上に公開されている。青土社からも網羅的な神話・伝説のシリーズが出ているが、これは神話のテキスト自体ではなく、地域ごとの神話や伝説の概説である。

西アジア

 ユダヤ教聖典キリスト教側から『旧約聖書』と呼ばれているもので、キリスト教では、これに『新約聖書』が加わり、セットで何種類かの翻訳が出ている。カトリックの翻訳と、プロテスタントも含めた共同訳などがある。これらは普通の出版社からは出ていない。岩波文庫などでも部分訳は読める。どの文献を聖書に含めるのか、含めないのかは、ユダヤ教正教会カトリックなどで見解が分かれるが、一般にキリスト教の聖書に収められなかった『外伝』や『偽典』は、『聖書外典偽典』(日本聖書学研究所)7巻にまとめられている。主な外典は講談社学術文庫3冊におさめられている。

 イスラームは、新旧の聖書も聖典として認めているが、それに続く最後の聖典として『クルアーンコーラン)』を最も重要と見なしている。中田考の和訳が最新で、格調高い。一般に普及してきた岩波文庫の『コーラン』は、井筒俊彦の訳になるもので、独特の口語調である。イスラームで『クルアーン』と共に重視されるのが、ムハンマドの言行録『ハディース』であり、これは講談社学術文庫から和訳が出ている。

インド

 主要な『ヴェーダ』は岩波文庫から翻訳が出ている。『ウパニシャッド』は佐保田鶴治の訳が平河出版から出ている。湯田豊訳は、さらに本格的である。『ヨーガ・スートラ』やハタ・ヨーガの経典も平河出版から佐保田訳で出ている。インド六派哲学のそれぞれの主要経典と解説は、中村元選集に収められている。宮本啓一による訳や解説もある。ジャイナ教の概要も中村元選集に収められている。『バガヴァット・ギーター』の和訳はいくつかの文庫で出ている。

 仏教経典はきわめて多岐にわたるが、時代の変遷とともに、おおよそ初期仏教、大乗仏教密教の三段階に分けることができる。

 パーリ語でまとめられた初期仏教経典の原文はオンライン上の『Pali Tipitaka』で公開されている。『南伝大蔵経』(大蔵出版)は網羅的だが、翻訳が古い。主な経典の翻訳としては春秋社の『原始仏典』がある。これは経蔵の長部、中部、相応部の全訳である。片山一良訳の『パーリ仏典』の刊行も相応部の途中まで進められている。小部経典の全訳は正田大観の翻訳で電子書籍化されたが、『スッタニパータ』や『ダンマパダ』など、中村元による部分訳は岩波文庫からも出ている。その他、『ジャータカ』は春秋社から、『ミリンダ王の問い』は東洋文庫から出ている。漢訳された阿含経典からの抄訳は、平河出版(長部)とちくま学芸文庫(長部、中部、相応部からの抜粋)から出ている。ホテルの引き出しなどに収められている『仏教聖典』(仏教伝道協会)は、初期仏教経典の中から選んだも断片をキリスト教の聖書サイズに収めたものである。

 大乗経典は、漢文の大蔵経を翻訳したものが大蔵出版などから出ているが、一般向けに主な経典を網羅したものとしては中公文庫の『大乗仏典』15巻が手頃である。東京書籍の『現代語訳大乗仏典』7巻は、中村元による解説が豊富だが、収録されている経典の数は中公文庫より少ない。日本で重視される主な経典の和訳は、岩波文庫など、中公文庫以外からも出ている。ことに『般若心経』『法華経』『維摩経』『無量寿経』『阿弥陀経』『中論』についてはサンスクリット原文との対訳が一般向けに出版されている。

 密教経典はチベット大蔵経によく保存されているが、日本語への翻訳は行われていない。日本に輸入された中期密教までの『大日経』や『理趣経』などの和訳は講談社学術文庫などから出ているが、後期密教の和訳は『秘密集会タントラ』(宝蔵館)を除いては、ほとんど一般向けに出版されていない。

中国

 儒家四書五経や、老荘、その他諸子百家など、漢籍は繰り返し和訳されてきた。歴史書や詩集なども含め、近年まとめられた、もっとも網羅的なものとしては、明治書院の『新釈漢文大系』120巻がある。集英社の『全釈漢文大系』33巻も、いずれも原文と翻訳と注釈がある。平凡社の『中国古典文学大系』60巻にも主な思想書は含まれているが、原文は載っていない。原文と翻訳を載せた中型本としては『中国古典新書』100巻+続編がある。『新釈漢文大系』に収められていない著作も多く扱っている。ただし、抄訳が多い。全文を収録している巻については、「Cask Strangeth」に一覧がある。文庫版では、朝日新聞社の『中国古典選』が網羅的である。その他、主な著作の文庫版は岩波文庫など各社から出ている。

論語

 吉田賢抗(訳) 1961 『論語(新釈漢文大系1)』明治書院
 吉川幸次郎(訳)1978 『論語 上(中国古典選3)』朝日新聞社
 吉川幸次郎(訳)1978 『論語 中(中国古典選4)』朝日新聞社
 吉川幸次郎(訳)1978 『論語 下(中国古典選5)』朝日新聞社

 (以下、作成中)

日本

 日本の古典文献としては、岩波書店小学館などから全集が出ている。日本の神道が依拠している神話である『古事記』と『日本書紀』や『日本霊異記』『今昔物語』『宇治拾遺物語』などの説話集は、これらの全集に含まれている。こうした主要な神話や説話の翻訳は、各社から文庫でも出ている。

(2016/2559-03-29 作成 04-01 更新 蛭川立