「超常現象を信じる心を科学する懐疑論的心理学」(資料)

海事都市・天文台のあるまちグリニッジ

ロンドン都グリニッジ区は、古くはテムズ川に面した港湾都市として栄え、今では古い天文台を中心とした博物館群になっている。

グリニッジの港を見下ろす丘には天文台が作られ、世界各地を航海する船舶のために太陽を観測して標準時(GMT: グリニッジ平均時)を定めていた。またここには経度ゼロ線が引かれ、観光名所にもなっている。

BBCのニュースから「うるう秒とは何か?」。(動画)背景に写っているのが王立天文台グリニッジ

●世界一周旅行でグリニッジ天文台の本初子午線(経度0線)を越えようとしている内海春平君(明治大学情報コミュニケーション学部(蛭川ゼミ)卒業生)と記念写真(写真

天文台は今では天文学と時間の博物館になっている。またフラムスティード天文同好会というアマチュア天文学の同好会の拠点にもなっている。

グリニッジ天文台の28インチ望遠鏡を使った観望会(写真

●毎月行われる天文学の講演会「フラムスティード・レクチャー」の後で議論するフラムスティード天文同好会の人々(写真

グリニッジ大学と超心理学・意識研究

テムズ川に面した旧海軍大学は、今ではグリニッジ大学と海事博物館になっている。

グリニッジ公園の丘の上にあるグリニッジ天文台から見下ろしたグリニッジ大学とテムズ川写真

グリニッジ大学のデイヴィッド・ルーク講師らのグループは、超心理学、とくにサイケデリックスによる変性意識状態と予知体験との関係を研究している。2015年の国際超心理学会イギリス心霊研究協会サイケデリック意識国際会議の年次大会は7月にグリニッジ大学で行われる。

●2014年4月にイギリスのWarwich大学で行われた「Scientific and Medical Network」の研究大会。テーマは時間論。閉会の挨拶をするデイヴィッド・ルークとピーター・フェンイック(写真

●ルーク講師による「予感」についての発表。物理的時間が対称的なら、心理的時間も対称的か?(図はDick Bierman (2010)より引用)(写真

ゴールドスミスの変則的心理学

一方、グリニッジ区に隣接するルイシャム区にあるロンドン大学ゴールドスミス校心理学科変則的心理学研究室(APRU: Anomalistic Psychology Research Unit)では、クリス・フレンチ教授以下、超常的体験を通常の心理学で説明したり、超常現象を信奉する心理の研究が行われている。特別講義にはグリニッジ大のルーク講師なども招かれており、活発な議論の場になっている。

ロンドン大学ゴールドスミス校心理学科(写真

ロンドン大学ゴールドスミス校のカフェで、ケンブリッジ大学に在籍していた菊池聡、クリス・フレンチ先生と(写真

2015年のヨーロッパ懐疑主義会議は9月にゴールドスミスで行われる。

また、グリニッジ区在住のフレンチ教授は、自宅の近所のパブで「グリニッジ懐疑論パブ」を主催している。パブは公共空間で、誰でも自由に出入りでき、また研究会などの場所としても機能している。

●「グリニッジ懐疑論パブ」の会場「Star and Garter」(写真)夜空を横切る緑のレーザー光線は、グリニッジ天文台から発射されているレーザー光線。

超常現象信奉派と懐疑論者という単純な対立図式は過去のものとなりつつある。懐疑論者は厳密な実験超心理学に対してよりも、社会的に有害な疑似科学信奉を批判することに重点を移しつつある。同時に、超心理学実験の結果そのものについての論争が下火になっているのもまた事実である。

●「グリニッジ懐疑論パブ」で話題提供する変則的心理学研究室の大学院生(当時)Rob Brotherton氏。テーマは「陰謀論の心理学」(写真

陰謀論を信奉する心理も変則的心理学研究室の主要テーマだが、陰謀論は知能の低い中年男性の趣味といった観点から単純に小馬鹿にするのではなく、陰謀論信奉は年齢・性別・教育水準とは無関係であることを実証的に研究する試みが始まっている。

興味深いことに、陰謀論信奉はたんにパラノイア的傾向と相関するだけではなく、性格におけるビッグファイブのうち「開放性 openness」のような、一般には好ましいとされる因子とも正の相関を示すことが明らかになってきている。

このことは、たとえば超心理学においてESP実験の結果が外向性と関係するといった知見などのように、超常的とレッテルを貼られて精神異常のように語られてきた体験を、普通の人が誰でも体験しうること、またそれを信じることには何らかの適応的な意味があるといった、肯定的な(少なくとも中立的)な立場から研究できるパラダイムが育ちつつあることを感じさせる。


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(2015/2558-06-12 作成 06-20 修正 蛭川立